第33話

ネイビーブルーの壁に、白で統一されたアンティークの家具。



ヨーロッパのお城みたいな部屋を照らすのは、天井に吊り下がった豪華なシャンデリア。



全部、イタリアから取り寄せたんだよってひー君が教えてくれた昔の記憶を思い出す。





「日鞠、学校どうだった?」


「うーん、不安でいっぱいだよ。」




童話のお姫様や王子様が住んでいそうなひー君の部屋は、昔から変わらず塵や埃一つ落ちていない。




「不安?どうして?何かあったの?」





湯気を立てている淹れたてのセイロンティーに、スコーンが並ぶケーキスタンド。



それ越しに首を傾げたひー君に、私は苦笑を零した。





「お友達…作れるかなって…。」




まだ入学初日の癖にと言われてしまうかもしれないけれど、それでも既にいくつかのグループが出来てしまっていた教室の雰囲気は私の心の霧を濃くさせるには十分だった。



自信のなさからか、無意識に降下した視線の先には透き通った紅茶の水面に浮かぶ自分の情けない表情。





「どうして?」


「え?」


「どうして、友達なんて必要なの?」





正面から放たれた問いかけに、私の顔が咄嗟にそこを向いた。





「どうしてって…。」


「日鞠に友達なんていらないよ、だって僕がいるじゃない。」





紅茶を啜り顔を綻ばせたひー君は、純粋無垢な子供のようだった。

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