第32話
早く全員の名前を覚えたいからと、一方的に先生が出席を取り始めてしまった。
「
病欠かもしれないのに、先生の口ぶりはまるでその二人がサボりで欠席しているのだと知っているようだった。
困ったように眉を下げて苦笑を零す先生と目が合ったような気がしたけれど、微妙に逸れているような気もする。
「ほらね、やっぱりそうだよ間違いないって。」
「神楽なんて苗字も珍しいし、この辺で神楽って言ったらあの人しかいないよ。」
「そうなると朝日君もやっぱり…あの人って事?」
「そうに決まってるよ。」
「やだ…怖い。」
途端に四方八方から、話し声が聞こえ始めた。
そしてここにきて、こちらへと集まる視線に対する違和感の謎が漸く解けた。
この視線は私に向けられているものじゃなくて、どうやら私の両隣の空席に投げられている物らしい。
私を挟むようにして左右にできている空席。
そこを指差して話している人もいれば、先生もこの二つを交互に眺めながら溜息をついている。
「ここに入学するって噂では聞いてたけどまさか本当だったなんてね。」
「最悪だよ。何でよりによって二人揃ってこのクラスなの?」
「俺達不運過ぎるだろ。」
「いや心配しなくても、どうせろくに授業も出ないだろ。」
欠席しているというのに、他の人達も私の両隣の空席の持ち主が誰なのか見当がついている様子だ。
神楽さんと朝日さん。
どっちも聞き覚えもなければ、ピンとくる人物も浮かんでこない。
「明日から普通に授業が始まるから、皆ちゃんと教科書は準備しろよ~。」
「「はーい。」」
結局、最後まで二人の正体は明らかにならないままだった。
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