第31話

これからの学校生活に対して不安や緊張を覚えている間に、入学式は終わりを告げてしまい、とうとう自分のクラスへと足を踏み入れた。



ひー君のいない教室なんて初めてだ。



ひー君のいない学校生活。




まだ心は沈んでいるけれど、いい加減に気持ちを切り替えなくちゃ。



高校こそは友達を作りたいと思っていたから良い機会だと思えばいいんだ。



いつまでもひー君に甘えてばかりじゃ、鬱陶しがられるかもしれないもん。





「………。」




あれ。



自分の席に座ってから暫くして、教室内の様子が可笑しい事に気が付いた。



同じクラスの人達が、皆こちらへと視線を投げてくる。


それだけじゃなくて、コソコソと何やら話している姿も確認できた。




「え…私何か変な事したのかな。」




いつも視線の的であるひー君も隣にいない今は、人に見られる理由が思い当たらない。



通学時間が少しかかる事と、進学校だという事もあって、私の地元からこの高校に入学したのは私とひー君の二人だけだ。



都心の中学の人達が多いとは聞いていたけれど、どうやら同じ中学の人達で既にグループが完成してしまっているようだった。



どうしよう…最初から出遅れてしまった。



不安は積る一方で、「ブス」や「気持ち悪い」と拒絶された過去に怯えて積極的に話しかけに行く勇気もまだ持てない私は、ただじっと席に座って俯く事しかできない。




「はーい、席に着けー。」




いたたまれない空気を割いてくれたのは、入学式で紹介された担任の先生だった。

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