第28話

大きく壁に貼り出されたクラス表。



人垣を掻き分けて、その前へとやっとの思いで辿り着いた私は、早速絶望の淵に立たされていた。




「嘘……。」




理由は一つ。


私とひー君の名前が、それぞれ違うクラスに記載されていたのだ。




初めて、ひー君とクラスが離れてしまった。




「どうしよう…。」




7クラスもあるのだから、一緒になる方が難しいのかもしれないけれど、保育園から一度もひー君と離れた事がなかっただけに高校も一緒だと信じて疑っていなかった。


けれど、別々のクラスだという現実を突きつけられた今、私の心にたちまち不安の霧がかかる。





「ちっ、何で僕が日鞠と違うクラスなわけ。有り得ない。」




盛大に落ち込む私の傍から、落ちてきた声。


よく知っているそれなのに、随分と乱暴な言葉遣いに吃驚して視線を伸ばせば、クラス表を見て不機嫌に顔を歪める幼馴染が映った。



柔らかな質の良い髪をぐしゃりと掻き乱して、舌打ちを零すひー君は私の知っている温和なイメージと大きく違っている。



見た事のない彼の新しい姿に困惑が勝る中、私は彼の制服の袖口を摘まんだ。




「ひー君…クラス、離れちゃったね…。」




口にして初めて、本当にバラバラになってしまったのだという現実を痛感する。



思わず涙が出そうになって、語尾が震えてしまった。




「日鞠…ちょっとあっちに行こうか。」




ひー君に手を引かれ、階段横にできた死角の部分に連れて来られた。




「きゃっ。」



刹那、私の身体はひー君の温もりに包まれていたのだった。

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