第27話
嫌だな、私の心が狭いからなのかもしれない。
ひー君と幼馴染ってだけでも奇跡みたいなものなのに、学校の敷地内を歩くだけでもう既に数えきれない程の友達候補ができあがっていく彼に焦っているんだ。
「日鞠?」
「…えっ…あ、ごめんなさい。ぼーっとしちゃってた。」
名前を呼ばれて我に返った私の目の前にあるのは、女の子達の視線をあっさりと奪ってしまう美しい貌。
「可愛い。ぼーっとするくらいなら僕だけを見ててよ。」
ひとたびその貌に笑みが作られた時には、それはもう一つの藝術品みたいだ。
…言えない。
私を置いてお友達を沢山作るひー君が羨ましくて、胸が痛いの。だなんて、そんな我儘な心を彼には知られたくない。
こんな、醜い感情なんて消えてしまえば良いのに。
「てっきり日鞠が他の男を見てるのかと思って焦っちゃった。」
「もう、そんな余裕なんてないよ。」
「あはは、余裕があっても絶対に他の男を見るなんて許さないよ。」
「…ひー君?」
「ううん、何でもない。ほら、クラス表見に行こうか。」
「う、うん。」
一瞬だけ、ひー君の顔が冷徹に見えたのは気のせいだろうか。
次の瞬間にはいつも通りに麗しい笑みを彼は浮かべていた。
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