第26話

彼は自分の容姿が群を抜いて優れている事を自覚していないのだと思う。




そして、それと同時に、いかに自分が異性にとって魅力的に映っているのかもひー君はきっと、分かっていない。





「ちょっと、あの人見て。」


「え、綺麗。」


「凄く格好良くない?」


「新入生かな。」


「同じクラスになりたいかも~。」


「でも見なよ、思いきり彼女いるじゃん。」




漸く見えてきた校舎。


正門を潜れば、至る所に同じ制服を纏った人達で溢れかえっていた。




女性の視線はあからさまに増すばかりで、皆ひー君を見ては頬を赤らめたり、うっとりとした目をしたりしている。


当然だよね、だってひー君王子様みたいだもん。


保育園の頃から、ひー君はいつだって女の子に絶大な人気があった。



だから、こうしてひー君に女の子が恍惚としている場面に遭遇するなんて慣れっ子だ。



それなのにどうして…。



「日鞠?」


「……。」





どうして、少し胸がチクリと痛むのだろう。

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