第25話

駅を出て通学路を歩いているだけなのに、あちらこちらから視線を感じてしまう。



通学路だけじゃない。


電車の中でも、駅でも、それはあった。




これは決して自意識過剰とかではないけれど、その視線達は間違いなくこちらへと向けられている確信がある。



理由は明白だ。



私の隣にいる人が人並み外れた美しい容姿を持っているからだ。


ひー君と一緒の時は、いつだって人の視線を感じてしまう。





「ひ、ひー君。」


「ん?」




ひー君は視線などまるで感じてもいなさそうに歩いているけれど、私はどうしてもそれに慣れない。




「あ、あの…手…離しても良い?」




指をしっかりと絡め繋がれた手。


そのせいで、視線から逃れるべくひー君との距離を取りたくても叶わない。





「どうして?」


「…えっと…。」


「僕と離れたいって事?手を繋いでると困る事でもあるの?それとも他に理由があるわけ?」




連続して責め立てるように言葉を落とされ、どれから答えればいいのか分からずに戸惑ってしまう。





「逃がさないよ、日鞠は僕の物だよね。何処にも行かせたりしないから。」


「……。」


「約束忘れたの?」


「ううん。」


「二人でいる時は?」


「……必ず手を繋ぐ事。」




圧迫感と威圧に負け、私が小さく声を絞り出せば、握られていた手に彼が更にぎゅっと力を込めた。



「覚えてるなら分かるでしょう。日鞠は僕から離れたらいけないの、分かった?」


「…うん。」




私の返事に満足そうにほくそ笑んだひー君は、止めていた足をまた動かし始める。



視線に耐えられなくて、私は地面を見つめたまま道のりを歩いた。

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