第24話

お家から徒歩15分だった中学校とは違い、今日から通う事になる高校は2つ隣のこの県で一番栄えている街にある。


私立の中ではトップクラスのその進学校から、どうにか合格通知を貰えた記憶がまだ新しい。




「ひー君、本当に良かったの?」


「ん?何が?」


「だって、ひー君ならもっと頭の良い公立や他県の私立に行けたでしょう?」




電車に揺られながら、肩の触れる距離にいるひー君へと質問を投げる。



中学では一度も首席から落ちる事がなかったひー君は、教師からの期待を背負う程の頭脳の持ち主で、てっきり私はもっと有名な進学校に入学するのだと思っていた。



だからこそ、高校へ受験票を提出したその日に、ひー君の口から同じ高校を受験すると聞かされた時は驚いた。



「どうして?僕日鞠と離れたら死んじゃうのに?」




一言も受験する高校を教えていなかったのにも関わらず、ひー君の手には私と同じ高校の名前が記載された受験票が握られていた。



優しいひー君の事だから、友達のいない私に気を遣って一緒の進路にしてくれたのだろうか。



今日までずっと、ついついそんな事を考えてしまっていた。




「勉強なんて何処ででもできるよ、僕にとっては傍に日鞠がいるかどうかが一番重要なの。」


「そうなの?」


「そうなの。それとも……日鞠は僕と離れたかった?」




急に、温度をなくした冷たいひー君の声に私はすぐさま否定した。




「そんな事ないよ、ひー君がいてくれて嬉しい。」


「そっか。日鞠も僕と同じ気持ちでいてくれて嬉しい。大好きだよ、可愛い僕の日鞠。」




開いていた瞳孔が縮み、いつもの柔らかい笑みに戻ったひー君に、私の口から安堵の息が零れ落ちた。

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