第18話
お風呂から上がって、自室への道を歩いていると私の部屋の扉に凭れかかっている人影が目に入った。
「あれ、帰ってたの?お帰りなさい。」
腕を組んで視線だけをこちらへと移動させたその人物は、思い切り顔を顰めた。
「あいつ、来てたでしょ。」
「へ?」
「この甘い匂い、あいつしかいない。」
相手の顔に浮かんでいるのは嫌悪感。
“あいつ”そう呼称されている人間が誰なのか、私は知っている。
「ひー君の香り、そんなに残ってる?」
鼻孔を膨らませて空気を取り込んでみるけれど、そこまで甘い香りはしない気がする。
「お姉ちゃんは分からないよ。」
「え…きゃっ…。」
急に腕を引かれたかと思えば、私の背中を扉が受け止めた。
息の掛かる距離にあるのは、私と似ずに育った端正な顔。
「あいつといすぎて、お姉ちゃんは気づかないんだよ。」
「……。」
「高校まで一緒だなんてどんな悪夢だよ。」
「
自分の前髪をくしゃりと搔き乱した相手は、歳が一つしか変わらないのに、私よりも遥に大人っぽい。
身長だって、とっくに追い越されてしまった。
「お姉ちゃんは気づいてない。」
「え?」
「気づいてないんじゃなくて、気づけないんだよ。」
「何の事?」
「あいつの事だよ。あいつ…久遠氷雨は異常者だ。」
美人なママと瓜二つな顔が歪められた。
正真正銘、私
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