第12話

生まれた時から一緒にいるけれど、時々ひー君の言っている事が上手に理解できない時がある。



きっとそれは、私が馬鹿なだけだ。





「ひー君、私の瞳が欲しいの?」


「うん、瞳だけじゃないよ。日鞠を生かしている心臓も、ピアノを美しく奏でる手も、すらりと伸びた細い脚も、全部欲しい。切り離して肌身離さず持っていたいくらい。」


「……。」


「でも、そんな事したら日鞠が死んじゃうからね、だからこうして印を付けておくね。」


「痛っ……。」




私の鎖骨の下に思い切り牙を立てたひー君が離れれば、白い肌が青紫色の花弁を咲かせていた。





「可愛い日鞠を見てたら我慢できなくなってきた。」


「ひー君、苦しそう。」


「日鞠の中に入りたい…駄目?」




蜜の溢れている部分に指を挿入され、搔き乱される。




「あっ…ああっ……。」


「日鞠が、苦しい僕を楽にしてよ。」




カチャリ



ひー君が片手で器用に自分のベルトの金具を外す音が響いた。



その刹那…。




「日鞠~!氷雨君~!そろそろご飯にしましょう!!!」





一階から、私達を呼ぶママの声が私達に沈黙を走らせた。




「残念、時間切れみたいだね。」




眉を八の字に下げて苦笑したひー君がベッドから降りて、私の手を引いて起き上がらせてくれた。

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