第42話

第42話

―bar cross―


…ゴク、ゴクッ。


「ふー。。」


今日は……なんだか呑むペースが早い。

…きっと、"酔いたい"のだろう。


「……かなで。ありがとう。」

飲み干したグラスに、小声で呟く…。


先日、リュウを連れていった

あの海は……


奏が眠る、海。


いつだって…奏は、俺を助けてくれた。

こんな俺を、…愛してくれた、唯一の人。



あれは…不慮の事故だった。。


あの日。奏と俺は…些細ささいな事から

喧嘩になり、奏はサーフボードを片手に

部屋を飛び出して行った。


そして…そのまま、帰らぬ人に。




『大切な人を、失ってからじゃ遅いんだ。』


リュウに言った言葉だが…。

俺自身への、言葉でもある。


俺は……だ、

いや、この一瞬、一瞬でさえ…

奏を愛している。


会うことも、

言葉を交わす事も、触れる事もできないが

奏だけを、愛している。

これからも、愛し続ける。。




『…蓮。俺もお前を、愛しているよ。』



「…え!?………奏?」

辺りをキョロキョロ見たが、

奏が、居るはずもなく…


でも今、確かに奏の"声"が…聞こえた。。




「ちと、…呑みすぎたかな?(泣笑)」

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