天上の花 地獄花【完】

白愛

彼岸花

第1話

あの秋の日。

私は、忘れてはならない事を

忘れて…迷い込んだ此処で、


戻る事も 帰る事もできなくなった。


幾年、此処で過ごしたのだろう


…此処に在るのは

月明かりと月影と、見渡す限りの

真っ赤な『彼岸花』だけ。


…時折、同じく。

「魅入られた者」が来るが

その者達は、"忘れて"いなかった。


何度も、助けを求め声を掛けたが…

その者達には、皆

私が見えていなかった。


…見えるのは『死人(しびと)』

に、だけだった。


私は、幾千もの『死人』を見送った。


今では 此処で生き抜く術(すべ)を

自然と学び尽くした。



…当初は、自分でさえ 帰れずに

困惑して 気が狂いそうだったのに


成仏できない、死人に…いや、

『地獄』へ堕ちるしかない死人に

毎日、毎日…殴られ 蹴られ

暴行を受け続けた事もあった。


他には…私を拝み 助けを乞う者。


自分の、状況を受け入れ…

静かに 成仏してゆく者も居た。



…しかし、私だけ何故?

此処から 帰れない?戻れない?


天上(あの世)へ 成仏もできない。

かといって、地獄へも堕ちれない…


何かしらの『理由』があるのか…?


……きっとそうだろう。

私には、此処へ来るまでの

記憶が  殆んど無い。


だが唯一、覚えている事がある

それは【667】この数字のみだけだ。


此れが、何を意味するのかは

さっぱり わからない…。



…………?

それにしても、今日は誰も来ないな。


此処には、月しかないので

「今日」と言うのも

変な話だが…


……?!

急に 背筋がゾクッとした!

何か…………いや、誰かが居る!!


恐る恐る、振り返った…

すると 其処には……


長い黒髪に、白く透き通る肌の

美しい女性が立っていた。

黒色の着物姿で、よく見ると

瞳の色が片方だけ 赤かった…



私はその美しい女性に見惚れていた


女性は、

少しずつ私に近づいて来た。

そして…「お話しできるかしら?」


私は、頷くしかできなかった…が。


「まぁ!嬉しい♪私は狂華きょうかよ。」

あ、意外と気さくな方だった。

良かったー!!


私は、ホッと一息ついた

女同士で、会話ができるのなら!

嬉しいに決まってる♪


「狂華さんなんですね♪私は…」


此の時、私は警戒心を緩め過ぎた

     だが 時は既に遅し…。

次の瞬間!!

  

「ハッ!…うっ?!」

私の中に入り込まれた感じがした!

どーなるの?!!私は……!



んっ…。どのくらい経ったのかな…?

…あれ、なんか違和感が

凄いんだけど、って?え!

何で、私が黒色の着物着てるの?!


「目が覚めた?」と、聞いたのは

……"私だった"!?

「な、何で!!私が…!!」

「本当にごめんなさいね。私は、

此処にある。彼岸花の精霊として

閉じ込められてたの。…ずっと。」


は?…精霊。彼岸花の!?

何を言ってるの?

閉じ込められたって…誰に?!

私は、思うだけで言葉が

出なかった。。


「この体、借りるわね♪これで

やっと!外に出られるわ♪♡」


え?外に出られる!?

「ねぇ!どうやって、

此処から出るの?私にも教えて!!」


「私と、同じ事をすれば…

出られるはず…。あ…でも。。」


「でも、何?!」


「あなた…数字を、覚えていない?」


「あ!覚えてる!どんな意味なの?」


「彼岸花は、全草有毒なの。

…その数字の個数分の、彼岸花の

球根を、食べれば致死量…よ。

此処を出るには、それが一番早いわ」


そう言ったと、同時に「私」の姿を

した、狂華さんは……消えた。。



    【667個】の

    彼岸花の球根を

 食べるって…自死って事だ



 きっと狂華さんは…自死

 ではなく、入れ替われる

  相手を探してたんだ!!


ふぅ。謎が解ければ、もう怖くない

むしろ、嬉しいくらいだな!

だってそれ程…戻りたい世界でも

なかったし、私は!今♡見た目は、

あの美しい!狂華さん♪だもの!!


このまま、此処に居るのも

悪くないなぁ~☆★☆♪

決定!私は此処で生きていよう!!笑




      -END-


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ♡◆♡Special sunkus ♡◆♡

  美しきKちゃんへ捧ぐ

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