第1話 TASOGARE(2)
追いかけなかった。
というより追いかけることができなかった。
圧倒的な拒絶のセリフに驚いたからだ。
今まで誰かにそんな事を言われたことのない俺は蓮に興味を抱いた。
それからというものの、教室でみんなと会話している間、俺は視線で蓮を追うようになった。
髪の毛はぼさぼさで、あの美しいと思った瞳が見えない。
あの時俺は、恋をした。
あの美しい輝いた瞳に⋯⋯。
でも俺はそんな気持ちにフタをするしかなかった。
相手は男で、俺は男を好きになったことなんてない。
女の子は俺の容姿ばかりを気にして、いつも話してくる。
一緒にいるのインスタのせて、いい?
そんな話に俺はもう、正直うんざりしていたけれど
いつものように、のらりくらりかわす。
ときおり、かっとしてはっきり言葉を吐いてしまうけど
「冗談、許して」
そう言うと女子はすぐに笑顔になる。
まったくかわいいというか単純な生き物だ。
でも蓮は男だし、俺を嫌っている。
「俺がリア充のリーダーだって?いったい誰がそんなホラふいてんの?」
「なんだよ、大地、何切れてんの?めずらしー」
「どうした、どうした」
親友の篤が俺の肩に手を当てた。
宥めようとしてるらしい。
「おまえさ、そんな噂?気にするんなよ、らしくねー」
「らしくねー?」
「お、くいつくじゃん」
休憩時間が終わって、俺らは席についた。
蓮の席は斜め前で俺の席からはよく見える。
授業そっちのけで眺めていると、机のしたでスマホをいじっていた。
動きからして明らかにゲームかなにかだ。
(言い度胸してんじゃん)
俺はにやついた。すると隣の女子の川上さんが気付いた。
「どうしたの?大地」
「いや、なにも」
「何もって顔じゃない」
「拗ねてる顔も可愛いね」
「また!」
川上さんはクラス委員で真面目だけどジョークのわかるいい奴だ。
そのくらいのお世辞はわかっている。
だが一年のころ、実は俺達はつきあっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます