第83話

「……冗談だから」



「ですよね」




加奈子にあっさり否定の言葉を述べられて俺はガッカリ……いや、凄く安心した。




「名倉さんってさ、私の苗字知ってる?」




「……いや、知らんけど?急にどうしたん?」




加奈子に言われて記憶を辿る。




そう言えば1年の付き合いやのに知らん。




学校も違うし。




「宮城だよ。本当に薄情だよね。シゲル君……いや、シゲくんは」




「……は?シゲくん?」




急に何やね……ん?




“シゲくん”




懐かしい声が脳裏に過ぎる。




「やっぱり全然覚えてなかったんだ?無理もないかー。私たち4、5歳だったもんね。でも、ちょっとショックかな?私はシゲくんに会いにこっちの高校を受験したのに」




加奈子に言われて確信を得た。




「みっちゃん?」




「あら?覚えててくれたの?」




目を見開いて驚く加奈子。




全然気づかんかった。




あの頃の面影なんて全然ないし。

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