第84話

俺が大阪におった頃に近所に住んでた“みっちゃん”か。



俺の幼なじみで……初恋の女。




宮城の、みっちゃんな。




まさか加奈子がみっちゃんやったとは。




「なんで今まで黙ってたん?」




「……自分で気づいて欲しかったから」




伏し目がちにそう言って、加奈子は俺から顔を背ける。




真っ黒な髪の毛が風に靡いて、加奈子の顔を覆い隠す。




「お前……俺の為に1人でこっちに来たん?」




「うん。シゲくんのことを忘れられなくて……」




「俺のことを?ずっと?」




「そう。再会した時に『ずっと好きでした。初めて会ったときから私の王子様だった』って言ったでしょ?シゲくんは私のことなんて忘れてたみたいだけどね」




加奈子は俺に視線を戻して苦笑いを向けてきた。




4、5歳の時からってことは10年間以上想っててくれたんか。




俺が忘れてるって知ってからも、ずっと。

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