第78話

「いや、その……」




あかん。言葉が見つからん。




こんな時に限って空気を打ち破ってくれそうな山崎たちは、海辺でキャーキャー騒いで戻って来そうな気配がない。




むしろ、カップル同士で水の掛け合いとかしてる。




イチャイチャしやがって。




「それって、俺のことを抱きたいとか思う方の好きー?」




「は?思うわけないやろ。アホか」




首を傾げて尋ねてきた拓真君の頭を軽く叩く。




好きは好きやけど、拓真君にそんなことをしたいって感情は抱いたことがない。




ただ『女やったらええなー』とか『ある日いきなり女になればいいのに』って毎度思うだけで……。




ん?待てよ。




女やったらいいのにってことは、イコール女が好きってことに繋がる。




そうか。そうやったんか!





俺は別にボーイズラブなわけやない。




やっぱり女の子が大好きやった。

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