第72話

「えっ?あぁ、まぁな」




動揺してるのがバレバレなくらい声が裏返った。




加奈子に告白されて、返事を返さんと、のらりくらりして1年。




特に進展もないまま友達として過ごしてきたけど、こいつまだ俺のこと好きなんかな?




「名倉さん?」




「あ、あぁ。加奈子は?泳がんの?」




そう尋ねたら加奈子は寂しそうに笑った。




「私、かなづちだから。名倉さんが一緒の浮き輪に入ってくれないと泳げない」




伏し目がちに落ち込む素振りを見せる加奈子に思わず吹き出す。




「ちょ、おま……っ嘘つけ!一緒の浮き輪に入りたいだけやろ!」



「はい」




俺の突っ込んだ言葉を、あっさりと認める加奈子。




……返事に困るやんけ。

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