第19話

それは、出口のない迷路のように抜け出せなくて。




深い闇の中に落ちてしまったかのようにどん底で。




真っ白な世界に閉じ込められたかのように何も見えなくて。




悪いのは私だって解ってる。




成宮君の目の前であんな……。




相当傷つけたし、失望させた。




もう嫌われちゃったかも知れない。




そう思ったら、怖くて不安でもう堪えられなかった。




「成宮君……っ」




だから、人目も憚らずに成宮君の背中に抱きついた。




離れて行ってしまわないように。




「え?美優……?」




抱き着かれた成宮君は、驚いた……それでいて、優しい声で私を呼んでくる。




でも、そんな成宮君の優しい声でさえも、今の私には不安材料にしかならない。




だって、優しい声を出すのは、別れる前の成宮君なりの優しさかも知れないんだ。




だから、言わなきゃいけない。




人目があろうとどうでもいい。




道徳だとか、常識だとかそんなもの一切合切関係ない。

















「私のこと捨てないで……っ。」






私にとって成宮君との別れほど辛いものなんてないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る