行き場のない想い side 柚木②



 文化祭が終わり、数週間が経過した。


 いつもの日常が戻って来た学校では、冬休みに向けて少しだけ慌ただしくなっていた。




 僕と平澤さんだけのボランティア部は相変わらず。


 寒くなっても、草を抜く。





 平澤さんはあの文化祭の後、僕に謝罪をしてきた。




『中途半端に柚木先生の誘いに乗って申し訳ございませんでした。私やっぱり、河原先生のことが好きなので、柚木先生とはちゃんと “先生と生徒”に戻りたいです』


 ということだった。







 最初は何も理由を話さなかった平澤さんだったけれど。しつこく聞くと、白状してくれた。





 どうやら……。

 あの時。河原先生に、好きだと言われたらしい。



 それを聞いた時、銃で心臓を撃ち抜かれたかと思うくらいの、衝撃を受けた。……撃たれたことは無いけれど。







 その後、“先生と生徒”に戻ることについて、何度も何度も謝ってきた平澤さん。




 大体、僕だって『河原先生のことが好きなままでも良いから』と言って、平澤さんを誘ったわけだから。



 平澤さんだけが謝るのはおかしい。僕だって悪いのだから、お互い様。






 そう言って謝罪をして、最後に頭を撫でさせてもらった。






「……しかし、平澤さん」

「はい」

「ここ最近、機嫌悪いですね」

「そうですか?」




 放課後のボランティア部。




 平澤さんは、荒めに土を掘り返しまくっていた。


 草抜きというか。土を掘っているだけだ。




「草を抜いて下さいよ」

「抜いています。土を掘れば、必然的に抜けます」

「……」




 何か、違うような……。そう思うも、機嫌悪そうな平澤さんに何も言えない。




「………」





 本当は抱きしめて、その機嫌が悪い理由を聞きたい。


 本当は、キスをして……安心して、大丈夫だよと伝えたい。




 けれど、“先生と生徒” 間にそれは不要。


 行き場のない、この僕の想い。




 どうすれば良いんだろう。




「………」





 なんて、僕らしくない。





 平澤さんと普通の “先生と生徒” に戻っても、このボランティア部で平澤さんと関われたら、僕はもうそれで良いのだから。





 そう、自分に言い聞かせ続けるだけだ……。







(side 柚木 終)






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