大人と子供

1



 折り紙を折って……折って……星。


 短冊に切って、丸めて、貼って……輪飾り。



「平澤さん、器用ですね」

「……いや、柚木先生が下手すぎます」



 放課後の文化祭実行委員会。


 川コンビが生徒会との打ち合わせに行っている間、私は柚木先生と装飾物の制作を行っていた。



「……それ、何ですか?」



 柚木先生が作った星……とは言い難い形をした“何か”。お世辞にも上手いとは言えないそれは、独特な形をしていた。



「星です。……すみません、平澤さん。実は僕、手先がめちゃくちゃ不器用です……」



 柚木先生は手に持っていた“何か”を机に置き、両手で頭を抱えた。


 そんな様子に、思わず笑いが零れる。



「柚木先生可愛いですね。ギャップ萌えしそうです」

「付き合いますか?」

「えっ!? 何故そうなるのですか!?」



 柚木先生が軽く微笑み、それに私も微笑み返すと、教卓で別の作業をしていた河原先生が向かって来た。



「平澤、俺も作る。紙を頂戴」

「あ……はい!」



 ピンクの折り紙を渡すと、河原先生は私の前に座り、黙々と折り紙を折る。



 折って、折って……折って………星。



 あっという間に綺麗な星が完成した。



「え、河原先生上手いですね」



 少しだけ得意気な様子の河原先生。


 もう1枚の折り紙を渡すと、ササッと綺麗な星にしてくれる。



「折り紙は得意なんだ。元嫁が保育士で…………あっ」

「…………」



 元嫁………。

 河原先生から出てきた、聞きたくなかったワード。


 バツ1なのは知っているけれど、いざ本人の口から聞くとちょっと複雑。



「……ごめん、平澤」

「いえ、知っていますから」

「………」



 訪れる、微妙な空気。


 でも大丈夫。バツ1なのは知っていたから……そんなにダメージは無い。聞きたくなかったけど、大丈夫。



「……あ、河原先生。なら、この立体の星も作ってみて下さい。これ、難しくて」

「あ、あぁ」



 折り紙の本を見ながら折り、サクッと立体の星を作り上げる河原先生。



「上手いし、早い……」



 意外な一面を見た。折り紙なんて無縁そうなのに。



「…………」



 そんな様子を、柚木先生はずっと無言のまま眺めていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る