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「僕は何度も貴女に、河原先生のどこが好きなのかと問いました。けれど、昨日の話を聞いて納得しましたよ。河原先生が良いって、貴女が言う理由」
「……」
「だからと言って、僕は別に諦めた訳でもありません。貴女にもうキスはしませんけれど、好きなのは変わりありません」
そう言って腕を伸ばして、私の頭を撫でた。どうしてそんなにも優しく撫でるのか。だけど思うだけで、言葉は出てこない。
「撫でるのは許して下さい」
「……」
「今は河原先生が変化をしているようですから。様子見をします。でもまた彼が貴女を泣かせるようなことをしたら、いつでも邪魔をしに行くつもりです」
涙目で微笑んだ柚木先生。その表情がまた辛くて、胸が痛む。
「そんな顔をしないで下さい。平澤さんは優しいですね」
「……」
「……ほら、食べないと昼休み終わりますよ。今日はボランティア部の活動をしますから。食べて体力を付けといて下さい」
「柚木先生に言われたくないですね」
「……だから僕も、お弁当を食べているでしょう」
こんにゃくゼリーはあげます。と笑いながら私の前に2つ置いてくれた。
陸上部のマネージャーができなくて、仕方なく入ったボランティア部だった。
最初の頃は草抜きなんて楽しくなくて、陸上部の活動様子を見るのも辛くて嫌だったけれど、結果的には良かったのかもしれない。
柚木先生が私のことを好きになってくれたのは想定外だったけれど、柚木先生のおかげで今を過ごせている。
今は草抜きも楽しいし。
「……」
だからこそ、もう柚木先生を傷付けたくない。
「……柚木先生」
「ん、どうしました?」
「……好きになってくれて、私を支え助けてくれて、ありがとうございます」
「……」
そう言うと、柚木先生の目からは溢れるように涙が零れた。
そして笑いながら目を拭い……。
「それを言うにはまだ早いですよ」
そう言って、わしゃわしゃと私の頭を撫でた──……。
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