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 暫く部室でボーっと過ごしていると、少しだけ嬉しそうな表情をした平澤さんが入ってきた。



「柚木先生、お待たせしてすみませんでした」

「……いえ」



 何故か、平澤さんの顔が見れない。挙動不審の僕を他所に、平澤さんは真っ直ぐ僕の目を見つめてくる。



「柚木先生、今日はどこの草を抜きますか」

「……」

「柚木先生?」

「あ、えっと……何ですか」

「草抜き、どこをしますか?」

「……生徒玄関の周辺にしましょうか」




 少しだけ元気になった平澤さん。その姿が嬉しくもあり、辛くもある。




「……河原先生と、話せましたか」

「はい、沢山話せました」

「そうですか……。良かったです」




 嬉しそうに微笑んでいる平澤さんの頭を軽く撫でた。



 キス、したい。

 そう思うやましい感情は、理性で捻じ伏せる。





「そういえば、柚木先生」

「……はい」

「河原先生と溝本先生、付き合っていませんでした」

「あ……そうですか」




 平澤さんに”2人は付き合っているのか”と聞かれた時、セフレですとは言えず、咄嗟に“付き合っている”と言った。


 高校生にセフレだなんて言えないって思ったけれど……河原先生はどう説明したのだろうか。



 分からない。河原先生って、本当に分からない。




「………」




 しかし、僕はこれからどうするべきだろう。



 今もまだ、平澤さんが好きで、触れたくて……どうしようもない……。





 これまでの関係を継続するか、普通の先生と生徒に戻るか。



 そんな、究極の岐路に立たされている。








(side 柚木 終)



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