壊れる心➃
浅い眠りの中、私は懐かしい夢を見た。
中学時代、風が強い日のことだった。
自転車で帰宅していると、風に煽られて道路脇の側溝に落ちたことがある。
その時自転車は側溝に引っかかり、私はその衝撃で数メートル先に飛ばされた。
「……いたっ……」
痛すぎる足を見ると、右足首が有り得ない方向を向いている。
「……え、う……うそ」
素人目に見ても、骨折していると分かるその足。
そう頭で認識すると、不思議なことに益々痛みが増す。
連絡手段も無いし、自力で移動もできないし……どうしようも無かった時、私に気付いてくれた人が走って駆け寄ってきてくれた。
「おい、大丈夫か!!」
「……」
ひらひらとネクタイがなびいている男の人。
私を安全な場所に寝かせ、救急車を呼んでくれた。
学校にも連絡をしてくれたようで、中学校の先生も数人来てくれ、対応をしてくれたのだった。
その後、学校に行って先生から聞いた、私を助けてくれた人のこと。
「平澤さん。最初に助けてくれた方、佐倉北高校の河原先生って言うらしいよ。事故の場所が高校の近くだったのが不幸中の幸いだね。だから早く見つけて貰えたのよ」
「……」
記憶に残る、焦っているような……眼鏡を掛けた男の人の姿。
たまに高校の裏を通ると、タバコを吸っているその人を見掛けた。
「河原、先生……」
私はその日を境に、助けてくれた河原先生がいる高校に進学したいと強く思うようになった。
家からも近いし。
そう思い、圭司と愛理も誘ったんだ───…。
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