薄い関係 side 河原②



 職員室で仕事をしていると、部活が終わった柚木先生が戻ってきた。


 溝本先生を含め他の先生たちはみんな部活に行っており、ここには俺1人。




 柚木先生は部屋を見回す。

 そして、俺の姿を見るなり睨みつけてきた……。



「……」

「……何だ」

「セフレがいること、別に咎めるつもりはありません。けれど、それにより傷付く人がいることをそろそろ覚えて下さい」

「……」



 誰を指した話か、分からなかった。



 そもそも、何でセフレのことがバレているのか。それすら分からない。その件について問おうとすると名前を呼ぶ。



「……柚木先生」

「あ、河原先生。弁解は不要です。僕は聞きません」



 しかし、用件を言う前に切り捨てられてしまった。


 そして柚木先生は俺から少し離れた自席に戻って行く。





「……意味が分からん」





 思わず漏れる溜息。





「……」





 誰を指した話か分からないと思ったけれど、ふと頭に過る平澤の姿。



 俺は知っている。

 柚木先生は、平澤のことが好きだということ。



 多分、そういうことだろう。



「はぁ……」




 そういう俺も。

 実は最近、無性に平澤のことが気になる。



 それが恋愛感情かと聞かれると、多分違う。




 生徒として気になるのかというと……それもまた違う。




 正直な話、自分でも自分の感情が分からない。





 そんな俺は、そろそろ溝本先生との関係も解消しなければならないと密かに考えていた。これについては平澤が関係しているわけでも無い。ずっと俺が思っていること。



 何もかも中途半端。



 いつの日か、柚木先生に言われた言葉。



 全く、その通りだと思う。





 他人にそう指摘されるつまらない俺は、本当に中途半端で適当な、どうしようもないただのクズだ。






「……はぁ」






 頭が痛くなる。




 俺は物事を考えることを止め、再び手元の書類に目を落とした。







(side 河原 終)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る