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 電車に揺られ1時間半。

 私たちは目的の水族館に到着した。




 水族館には沢山の家族連れやカップルが溢れ返っている。




「菜都、行こ」

「うん」




 圭司はさり気なく私の手を握って引っ張る。少しだけ頬を染めた圭司は、いつになく大人っぽく見えた……。






 チケットを買って中に入ると、早速大きな水槽が目につく。その中にはアジやメバル、タコなど、近海の海に生息している馴染み深い生き物が泳いでいた。



「普段、普通に食べちゃうけど……。こうやって泳いでいるのを見ると可愛い」

「……そうだね」



 圭司は私の手を握ったまま離さない。繋がれた手が妙にもどかしくて、全く落ち着かない……。



「菜都、ミズクラゲ!」

「お、圭司が見たかったやつ」

「可愛いよな、クラゲ。何か、菜都っぽいし」

「……え、どういうこと!?」

「小さくて丸くて可愛い」



 そう言って空いている方の手で、私の頭をそっと撫でた。



「…………」

「菜都、可愛い」



 ふわっと2、3回撫でると、ゆっくりと手を引いて、何事も無かったかのように次の水槽を目指す圭司。



「……」



 これは、やばい。




 私は『幼馴染と遊びに来た』っていう感覚だったけれど、この様子を見る限り、圭司は私と違う感覚で今を過ごしているに違いない。



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