2



「おはよ、菜都」

「おはよう」



 約束した日曜日。


 『お互いの家に迎えに行ったりすると愛理に見つかるかもしれない』


 そういう理由で、圭司とは最寄り駅で待ち合わせをしていた。



「ごめんね、急に誘って」

「いや、良いの。暇だし」



 今日の目的地は電車で1時間半の場所にある水族館らしい。



 圭司がどうしても見たい魚がいるって言うんだけど……。



「どんな魚が見たいの?」

「え? ……えっと、クラゲ! ミズクラゲ!!」

「……クラゲは魚じゃないよ?」

「あ、そうだっけ? ハハハハハ」



 明らかに様子がおかしい。少し挙動不審な圭司にこちらもまた、調子が狂う……。




「ねぇ……圭司。もうすぐ県体じゃない? 部活はどうしたの」



そう問うと、圭司は小さく溜息をついた。



「……いや、まぁ。たまには息抜きしようかなって。菜都と出掛けたいって思って誘ったんだけど、嫌だった?」

「そんなこと無いよ。愛理が居ないのが気になるけど」

「っ………」



 私も大概、意地悪だ。辛そうな表情の圭司を見たいわけでは無いのに、つい口走ってしまう。



「……ま、まぁ。愛理はまた今度。今日は2人で楽しもうよ」



 引きつった笑顔で、そう言う圭司。



「……分かった」



 事情を全て知っているからこそ、現状が辛い。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る