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 体育祭当日は、生徒待機テントではなく得点係用のテントで過ごす。


 そこから徒競走などの順位を見て、それを点数化していく。そして競技の最終で紅白何点かを計算し、大きな得点板に表記していくのだ。



 つまり、自分が出る競技以外では、ずっとその作業を行わなければならない。これが、得点係は大変だと言われる理由。





「え、平澤……」



 得点係のテントには、まだ1年と3年は来ていなかった。


 また、河原先生と2人の空間。私の顔を見た先生は、驚きの声を上げた。



「何だ、その顔……。どうした、何があったんだ?」

「……別に。何もありません」



 本当に子供な私。

 少しムスッとして、そっぽを向いた。



「……」



 河原先生のことを意識し過ぎて苦しい。

 心拍数は上がり、胸は締め付けられて……目にはじわっと涙が滲んだ。



 抱きしめられて『魔が差した』と言われたあの日から、本当に河原先生とは必要最低限の会話しかしていない。


 その事実がまた苦しい。




「……」




 珍しくジャージを着ている河原先生。


 その少し先にある繰出係のテントには、同じくジャージを着た柚木先生がいる。




 私が好きな先生と、私のことが好きだと言う先生の両方が視界に入り、また余計に苦しくなった。



 もう、どうすれば良いのか、本当に分からない。





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