3



 2限目はきちんと授業に参加することにした。

 柚木先生に脅されたというのもあるけれど、さすがに2時間連続で授業を抜けることはできない。




「あ、菜都!!」


 教室に戻ると、圭司が私の元に飛んできた。心配そうな圭司は勢いよく肩を掴み、優しく身体を揺さぶる。


「大丈夫だったか? あれから、何も無かったか? 何もされてないか?」

「け、圭司……落ち着いて。何も無いよ」



 言えない。さっきあったことは、何1つ言えない。


 河原先生のことも、柚木先生のことも。

 圭司にも言えないし、愛理が元気になって登校して来ても、言えない。


 私は、自分の胸の内に留めておくことにした。



「しっかし、河原の野郎……。俺、マジでアイツ許さないから」

「……」



 その圭司の言葉に、返す言葉が見つからなかった。


 無言で黙っていると本鈴が鳴り、教室に柚木先生が入ってくる。



 教壇に立った先生と、目が合う。その瞬間、凄く優しそうな表情で微笑んだ……。



「……!」



 そんな柚木先生、見たこと無い。思わず身体が飛び跳ね、動揺してしまった。



「どうした、菜都」

「う、ううん。何でもない」



 その私の様子に、首を傾げながら席に着く圭司。



 もう、何だろう。



 全て自業自得だが、河原先生に告白をしてから、正常に回っていたはずの歯車が噛み合わなくなって来ているような気がした。




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