3



 草抜きが終わり、荷物を持って校舎から出た部活からの帰り道。



 また、学校の敷地と道路の境界で、河原先生がタバコを吸っていた。その光景が目に入り、私の心臓は一気に心拍数を上げ始める。



 相談室で『先生のこと諦めない』と宣言をしてから、2人で会うのは初めてだ。

 他の道から帰るか、話し掛けるか。急に出てきた選択肢に悩み、少し立ち止まる。そして、どうするかを導き出した私は、話し掛けることにした。



「……よし」




 唾を飲み、軽く息を吐いて、先生の元へ駆け寄る。




「かーわはら先生っ♫」

「平澤……」



 少し体を跳ねさせ、あからさまに嫌そうな顔をした河原先生。その表情に少しだけ傷付いたが、その程度で私は挫けない。



「タバコって美味しいんですか?」

「……お前は知らなくて良い。てか何で俺がここに居るタイミングで現れるんだよ」

「違います。部活が終わるタイミングで先生がここに居るんですよ」



 更に先生の方へ近付くと、電子タバコの本体から吸い口を抜いた。そして携帯用の吸殻入れに入れて、冷たく一言。



「子供にとってタバコは害だ。近寄るな」

「こ、子供じゃないです!」

「子供だよ。高校生なんて」



 そう言って河原先生は校舎に向かって歩き始めてしまった。



「〜〜〜っ!!!」



 体に力が入り、思わず目に涙が浮かぶ。


 まーーったく相手にして貰えない!!!






 私が告白して、少し嬉しかったと言ってくれたのに。河原先生からはそんな雰囲気を一切感じない。





「子供扱い、悔しいっ!!」





 そう思いつつ、子供なのは事実だからまた悔しい。


 やり場の無い感情が溢れてどうしようもない私は、悔しすぎて小走りで家まで帰った。






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