2



「失礼します、2年の平澤です。河原先生…… 」

「今行く」



 放課後、言われた通りに出頭した私。


 河原先生は手招きをしながら、同じ階にある相談室に向かった。



「……さて、そこ座りな」



 狭い相談室に置かれた、2セットの生徒机。そこに座るよう促された。



 言われた通り大人しく座ると、先生も向かいに座って小さく口を開く。


 近くで見る先生……素敵。



「平澤、昨日の話だけどさ」

「……」

「突然だったから、咄嗟に思いっきり突き放したけれど。取り敢えず、好意を抱いてくれていたことに感謝だけはしておこうと思って」

「……」



 感謝って。

 振られたのに、感謝なんてされても。



「……」



 なんて答えれば良いのか分からない。




 無言のまま黙り込んでいると、先生は少し困ったように頬を掻く。



「まぁ……その。好意は受け取れないけどさ。俺、教師でオッサンだし。でも嬉しかったっていう感情も少しあったからさ、感謝だけ伝えさせて貰おうと思って。それだけ」

「……」



 諦めの悪い私。その言葉に、僅かな希望を感じた。


 キリッと先生を見つめて、力強く……でも小声で、言葉を発する。



「……まだ、可能性があるってことですよね」

「え?」

「私ね、昨日振られたからって、別に先生のことを諦めたわけではないですよ」

「……」

「先生が好き。それは今も変わりません。……先生が嬉しかったと少しでも感じてくれたなら、尚更私は、河原先生のことを諦めません」

「いや、平澤……あのな……」



 何か言いたげな先生だったが、これ以上の言葉は無用。



「では、失礼します」



 先生が言いかけた言葉を遮って、私は相談室を飛び出した。




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