出頭

1


「はい、始めます」

「姿勢を正して、礼」



 朝のショートホームルーム。教壇に立っている河原先生はいつも通りだった。



「今日は前に配布したアンケートの回収日だ。もし忘れた奴がいたら職員室に来て自首すること。連絡はこのくらいだ」



 そして河原先生は、黒い出席簿とスケジュール帳をパタンと閉じて一言。



「あと、平澤。お前は問答無用で、放課後職員室に出頭な。忘れんなよ」



 そう言い残して、教室から出て行った。



「……え?」



 フリーズしたまま固まっていると、ニヤニヤした愛理と圭司が近付いて来る。



「菜都、出頭……!」

「出頭って、警察署などに行くときに使う言葉だよな。職員室に出頭は違うと思う」

「出頭とか自首とか。きっとそんな言葉を使いたいお年頃なのよ!」

「いや、言うてオッサンじゃん」



 私の横でそんな会話をする2人。



 出頭って、何だろう。




 昨日のこと?



 しかないよね。





 盛り上がっている幼馴染を横目に、当の私は無性にドキドキしていた。





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