第82話

でも現実はそう簡単にはサツキが勝者にはなれない。



諦めた気持ちは、嘘?



「…かのん、久しぶり。」



「あ、英二。」



アタシがカフェでひとりで過ごしていると仕事中の英二が声を掛けてきた。



「いい身分だな、こんな昼間に。」



英二は笑いながら同じテーブルに座った。



「夜勤明けなの。ちゃんと仕事してるんだから。」



「知ってるって。」



英二はアタシにとってはやっぱり不思議なヒトだ。

別れても会えるとうれしい。

今更ちょっと携帯のメモリ消したのを後悔する。



「…彼氏できたか?」


「え?あー…まあ。」


アタシは濁すように返事をした。

いない、と言えばなんだか悔しいから。



「そうか、良かったな。」



英二は笑顔だった。



…もっと、

複雑な顔してよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る