鍵つきの男

第81話

―――あれから食事は喉を通らなくてアタシは食堂を出た。



友達をこんな形で失うとか有り得ない。



「平井さん、」



誰にも会いたくなくて非常階段を上がっていたらサツキがアタシを呼んだ。



「サツキ…」



「どうしたの、何かあった?」



…何かあった、じゃないよ。

アタシは無視して階段を上がる。



「こらこら、無視とか傷つくし。」



サツキはアタシの腕を掴む。

アタシは無言でサツキの手を払った。



「友達なくした。」



「いいんじゃない?それだけの関係だったって事で。」



「割り切れないの。」



「それだけの事で俺から離れたら許さないから。かのんも俺が離れたら困るね?」



…この男は、


もうアタシの弱みを握っている。

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