第80話

page 皐月




「五葉先生、すみませんがこの患者の心電図見てくれませんか?」



そう言って声を掛けてきた看護師は、



「あ、君この前の…」



かのんと連れ立って病院に来たコだ。



「PSVTなんじゃない?」


「ですよね、今病棟に循内の先生いないんです。五葉先生指示いただけませんか?」



「はい、じゃあATP準備してください。」



彼女は患者をリカバリールームに連れてくるとテキパキ準備をしていく。



俺はその間に救急カートの上で薬液の準備をしていた。



すると、



「五葉先生、かのんにモーションかけても無駄ですよ?」



「…どういう意味?」



俺は彼女を見ないでバイアルの中の薬液を注射器で抜き取る。




「彼女は一番彼氏にしたくない相手の職業は医師なんですから。」




「へえ…そう、関係ないけど。安心して?だからって芦田さんに揺らいだりしないから。」




俺は笑って答えた。

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