第77話

「そうすれば何もなかった事にしてあげる。」



…何もなかった事?


サツキは微笑む。


「もう声も掛けないし、かのんを追う事もしないから。」



「サツキ…、」



「俺はかのんにそんな顔させるために好きって言ったんじゃない。だから最後に思い出頂戴。」



最後…その言葉がアタシの胸を何故か締め付ける。

どうして?

アタシもサツキから離れようとしているから都合良いはずなのに。



サツキから言われたらこんなに心が揺らぐのは…。



「…かのん?」



サツキのアタシを呼ぶ声が違和感なく身体に沁み込んでいく事に気づいた――――。

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