第76話

サツキとタクシーに乗ってマンションに帰る。



「それだけ縫ったから痛みが出て来るよ。鎮痛剤持ってる?」



「うん、たぶん。」



サツキはアタシの部屋まで送ってくれた。


「ホント、ありがとう…おやすみなさい。」



アタシはそう言ってドアを閉めようとした。



閉めようとしたけど…、



「かのん?」



サツキは首を傾げる。



「えと…お金…、」


「お金?」



「治療代…。」



「ああ、良いよ今回は。材料費は…秘密で。」



「でも…」



それでもアタシが食い下がるとサツキは笑った。



「なに、俺に何かしないと気が済まないの?」



「そうだよ、タダでナートしてもらったし。」



アタシは自分の右腕を見つめる。


すると、


「だったらかのんからキスして。」


「えっ!?」



アタシは思わずサツキを見てしまった。

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