第74話

――――――…


「ロカール※するけど我慢して?」


「う、うんっ……」



まさか、

サツキに縫合されるとは思わなかった。



彩香と由芽は縫合終わるまで待つと言ってくれたのに、サツキは自分で送るって言った。



二人とも不思議な顔をしていた…当たり前だけど。



「…飲んでたの?」



「うん、」



「そう、ほとんどマンションにもいないね?特に夜とか。避けてる?」



「っ…別に…。」



サツキは切れたアタシの腕を縫合してゆく。

いつもは患者の縫合なんて気にしないのに、さすがに自分がされると直視できないでいた。



「…帰る途中だったんでしょ?ゴメン…。」



アタシがそう言うと、



「こんな傷を後から見せられる方が嫌だ。下手したら跡になる。」




無表情で縫合に集中するサツキの言葉はなんだか…アタシの心を揺さぶった。





※ロカール…局所麻酔

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