第62話

『あ…俺だけど、分かる?』



そんなすぐ忘れられるヒトじゃないもの、貴方は。


アタシは携帯越しの英二の声にもドキドキしていた。



「分かるよ、英二。」



『うん、この前はありがとう。恵美胃潰瘍だった。』



「胃潰瘍?」



『そう、あいつ今年社内の試験に合格して結構重要な仕事させられたから…。』



「あ、そうなの……大変なんだ。」



…アタシだって結構キツイ仕事してるんだけど?



『ほっとけなくて…』



だからアタシを捨てたんだ。

アタシも胃潰瘍になれば良かったのか。

そしたら英二は……。



「…好きなんだ?」



『…ああ、結婚したいって思ってる。』





あ。完璧終わった。


男が結婚したいと口に出したら本気の確率は高い。



アタシは英二の携帯番号を消去する覚悟を決めた。

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