第50話

マンションに戻ると部屋の前にサツキがいた。



「…おかえり。」



「…何しに来たの?」



アタシはサツキとは視線を合わさずにカードキーを差し込む。



「エイジの彼女はどうなったの?」



「胃薬飲んだら落ちついたわよ。」



「機嫌が悪いね?」



アタシは思わずサツキを見た。

人が必死で冷静になろうとしているのにこの男は!



サツキは笑った。



「こっち見た、避けないでよ。」



「避けてなんかない。ちょっと、自分の部屋に戻りなさいよ!」



サツキは許可していないのに勝手に玄関に入って来た。

そして、



「泣け。」



サツキはアタシを抱き締める。



「泣くなら一人で泣く、離して。」



「エイジだって今頃彼女とこうやって抱き合ってるよ、胃痛が治ったんだから。」



「あんたねえ!?なんでそう逆撫でするような言葉ばかりっ……!」



「俺はエイジが大嫌いだから。エイジは簡単に俺とかのんの時間を奪うから許せない。」




…は、

そういえばサツキもアタシを利用していたんだっけ。



睡眠導入剤として。

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