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島崎が軽くページに目を通している間、かなめはパーカーに質問を続けた。



「現場はもう見られます?」


「あぁ」


「遺体は?」


「そう言うと思ってロス市警に置いた。君が行くことは本部長に伝えてある」


「さすが元ロス市警官。仕事がお早い」


「茶化すな」



パーカーは最後の一口を飲み終えてカップを置くと、コートを持ってくるよう島崎に言った。


それから鞄を手に立ち上がり、かなめに右手を差し出した。



「それじゃ、よろしく頼むぞ。期待はしているが手荒な真似はよしてくれよ。被疑者は殺さず、確保することだ」


「えぇ勿論、わかっています」


「君のところの使用人は恐ろしくて敵わんよ」


「私の誇りです」


「殺人鬼がか?」


「パーカーさん…」




かなめが握った手に力を込めた。


細い指からは想像できない強さと鋭い視線に、パーカーは「すまん…」と言って手を離した。


島崎が持ってきたコートと帽子を受け取ったパーカーは、二人の見送りを断って部屋を出て行った。

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