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一口で飲んでカップを脇にやるのを、島崎が細めに見ているのは気づいていた。
「さぁ、そろそろ宜しいですか?パーカー本部長」
「あぁ勿論、いいとも」
パーカーは鞄に入れていた薄いファイルを取り出し、かなめに渡した。
『身元不明殺人事件捜査ファイル1』
と書かれたファイルを開いて、かなめは軽く目を通しながら言った。
「なぜFBIが捜査を?一件だけではないのですか?」
「遺体が丁度カリフォルニアとネバダの境界で発見されたからうちに回ってきたんだ」
「なるほど?」
「こっちはこっちで幾つか事件を抱えていて手一杯だったんで、二つの州捜査局に合同捜査でもさせたらと思ったんだが、丁度いいことに君の家はカリフォルニア州だった」
「うちは捜査局ではありませんよ」
と言いつつも口角を上げたかなめの視線に、パーカーも意味深な顔をして見せた。
「それはそうと、いつも言っていますが、捜査ファイルは全て拝見させてもらえます?概要じゃなくて…」
「それが全てだ」
「え、これだけ?」
かなめはファイルを閉じてその薄さを確認した。
手抜きにも程があるレベルの量だ。
「冗談でしょう?」
「君が思っていることはわかるぞ。アメリカの端から端を移動するのが面倒で現場検証を怠ったと言いたいのだろうが__」
「当たりですね」
パーカーは至って真剣に首を振った、
「それが全てだ。捜査員が飛行機で現場へ飛び、地元警察と情報を共有して…それが全てなんだ」
「……」
かなめはもう一度ファイルを開いて、一から目を通した。
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