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食後の紅茶の後、かなめは島崎が持ってきたいつもの仕事をこなし、呼び鈴がなるのを待っていた。



書斎は企業情報が棚一面に並べられ、他にも暖炉を挟んで多くの書物が溢れかえる秘密の部屋と化していた。



島崎がいつものようにかなめの斜め後ろから、昨日の会社の取引情報や会社の出来事等を報告していた。



その間溜まった書類に目を通したり、サインをしたりするかなめの眉間には、不細工な皺が寄るのもいつものことだった。



「__昨日の報告は以上でございます。何か疑問等ございますか」


「あるに決まってるでしょ」


「と、言いますと?」



かなめはそばに置いていた三つ折りの紙を、島崎に突きつけた。


「どうしてグロスやストッキングなんかまで経費で下されてるわけ?どこの馬鹿よ、こんなもの堂々と提出するのは…」



会社をなんだと思ってるのかしら…とほざくかなめ。


島崎はその紙の細く書かれた提出者の名前を見た。



「お嬢様、提出者は"ウメダ"でございます」


「……」


かなめはもう一度書類を睨みつけた。


二人の脳裏に、「テヘッ☆」とふざけた態度をとる女の姿が浮かんだ。



「あいつ…」


「よく言っておきます」



グシャッと紙がかなめの拳で握りつぶされたところで、ベルが鳴った。

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