第48話

「…ノックせずに入って来たのはななんだけど。」


着替えが終わって寝室から律が出てくる。


「だってまさかお昼に居るとは思わなくて。」



「今朝まで当直だったから外来は冬弥に任せた。」


律はリビングのソファーに腰を下ろす。


「コーヒーでも淹れようか?」



「いいよ、今から仮眠とるから。それより座って。」


律はアタシに手招きして呼ぶ。

アタシは言われる通り彼の隣に座った。


「此処なら誰にも気兼ねなくはなに触れる。」



「う、うん。」


律はアタシを緩く抱き締める。


…なんか緊張、する。


彼に触れられるのは別の意味で緊張する。


アタシは彼の背中に腕をまわそうとした。


あ…あの時の、

あの香水の香りはしていなかった。

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