第41話

「律、お母さん帰ってくるかも。」


「…いつ?」


「さあ…夜?」


アタシは曖昧に答える。

さっき出掛けたからすぐには帰って来ないかもしれないけど…。


「そう…じゃあこれ以上はしないから。」


そう言って律はアタシを自分の腕のなかに閉じ込めた。



律の体温がじわじわと伝わってくる感覚に身体が甘く痺れるようだった……。



だけど、



どこか違った。



何故か律のシャツから甘い香りが鼻を掠めた。



律は香水はつけない。


ましてこの匂いは……レディース。



薄く香るそれは柑橘系ではなくローズのようなモノだった。



アタシは少し律から身体を離す。



「なに?」


律はアタシの顔を覗き込む。



「う、ううん。ちょっと苦しいかなって。」



「そんなきつかった?力入れてないよ。」



…離れてもアタシからローズの香りは消えてはくれなかった。

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