第17話

「胎児の心音が確認しにくいみたいだ。このままではいずれ稽留流産になる。早めに掻把しよう。」



俺は淡々と彼女に伝える。

本当はこんな伝え方なんてしたくないけれど、自分の気持ちもそうはもたない。



「…なに言ってるの?宮城先生はそんなこと言ってなかった。」



「不安な気持ちを抱いている妊婦には言えない内容だから。」


はなは掻把の同意書を見つめる。



「どうにか…できないの?」



「残念だけど。蘇生とかのレベルじゃない。」



「律は医師でしょう?…自分の…子ども助けられないの?」



はなの目から涙が溢れる。



「ごめん、力不足で…。」



「どうにかしてよ…っ!アタシのことはどうなってもいいから!!」



はなは椅子から立ち上がって俺に訴える。



「はな、落ち着いて。そういう問題じゃない。」


俺は彼女の感情を高ぶらせないようにあえて冷静に対応する。



「もしそうだとしても俺ははなを助ける。」



「……なんでこんな時まで落ち着いていられるの…?信じられないっ…」



はなは俺に同意書を投げつけると自分の部屋に閉じこもってしまった。

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