このイケメン男子達は誰!?

「ったーい…」


酔いから醒めたように一気に目が覚めた。


見上げた瞳孔に見下すような鋭い視線が入り込んできた。

そいつが中心部にいた。


―――が、その容姿は まさに王子様…のような最高級特上のイケメンだ、、、


思わず、顔が赤く火照る。


ここは…いったい…


場違いな場所にでも転生して来たかのようなその洋館は奥行きが広く、

天井がめっちゃ高い。四方八方を見渡すインテリアはどれも最高級の物ばかりだ。

しかも…前方に並ぶ美男美女等は誰? そして、背後にもイケメン男子達……。


ーーーが、皆、物珍しい生き物でも見るかのように私に注目していた。


メイドの子達も『可愛いすぎる…』とても私が出入りできるような

場所ではない。



何なの…ここは……


それにこの人達は……誰なの?


「誰かこの女を風呂に入れてやれ」

威圧感丸出しのプリンスが口を開いた。



へ!? お風呂?


「はい、承知致しました。プリンス」


プリンスと慕われる男が言うと、他の者はそれに従う。

それは当然の様な暗黙の中での行為だった。誰も逆らう者などいない。



プリンス!? まるで、王と陛下だ。まさに王子様…。



「じゃ、俺が…優しく入れてあげるよ」

そう言って、後ろから可愛い顔でニッコリと笑顔で前に出て来た彼は

おぐちゃんと呼ばれる男の子だった。その表情はまるでアイドル系男子。


(わあああ…可愛いい…)


「おぐちゃんはダメだ。80キロのマイマイをお姫様抱っこできないだろ」


マイマイ? …誰だ?


「ピーヤンだって持ち上げることもできなかっただろ」


「だって…マイマイ、めちゃくちゃ重てーもん」


「あの…マイマイって…誰でしょうか?」

 

多分、私の事だろうと思っていたが、確認のために聞いてみた。


「誰って…宮間居舞子、アンタしかいないだろ。何言ってんの? アンタ…」


(やっぱり……。それはこっちのセリフだよ。しかも、何で私のフルネームを

知ってるんだ…)


私にくだらないあだ名を付けたイケメン男子は『ピーヤン』と言って

片目だけ黒い眼帯をしている怖いイメージがある男だった。

第一印象的には一番関わりたくない男だと思っていたが、喋り方はちょっと

チャラい系男子に天然をプラスした感じの男だった。もしかして、片目だけ

隠している黒い眼帯はフェイク。無理に怖いイメージを与えているのでは? 

それとも何かのキャラを演じているアニメオタクか!? 

まさに中学生レベルの発想だ…。多分、周りから見れば中二病だと

思われている誤解されやすいタイプの男子だろう。

片目だけ見てもイケメン男子だと思うのは一目瞭然。

なぜ、その素顔を隠すのだ。やはり中二病なのか…。



「じゃ、ジャンケンで決める? ほら、凪助もキューちゃんもおぐちゃん、

マドリ―、玉ちゃん、キャロット、センちゃん、ギネスも集まって…」

ピーヤンが皆に集合をかけるように手招きする。


「僕は遠慮しとくよ。その子、何か臭うし…」

キザな口調で物静かにトゲがあるキツイ言葉を言い放ったのはギネスと呼ばれる

イケメン男子だった。どちらかというと運動よりも頭が良さそうなクールな男。


「僕も力がないからいい…」

センちゃんと呼ばれる彼はマイペースでおっとりしているイケメン男子。



「私もいい…。だって、その子、汚いもん。汚れるの嫌だし…」

メイドの格好しているメイド系キャラの彼女はマドリ―と呼ばれていた。

見た目通り綺麗な子…。

【だが この時、舞子はまだ知らなかった。実はマドリ―は

女装が趣味の可愛い系男子だった。見た目は女。中身は男です】 



(だから…マイマイか……)


そう言えばここに居る連中って…まさか、全員、あだ名で呼び合ってる?

いったい何者ですか?


「誰でもいい!! 早くしろっ」

短気でイラちなプリンスが声を上げる。


『マイマイ、早く! こっち、こっち。早くしないとプリンスの怒りが爆発する』

そう耳元で囁きながら、おぐちゃんが舞子の肩にさりげなく手を回す。



近い、近い、めっちゃ至近距離なんスけど……。


男の子の顔、こんな間近で見たの初めてかもしんない、、、、

心臓の音がバクバクする。


ーーーっていうか、この子にお風呂 入れてもらうの?


嫁入り前の娘がダメよ、、、それだけはダメだ……。


それなら女の子の方がマシかも……


「あの…私…キャロットさんがいいです」


「お前に選ぶ権利はない!!」


うわああ…また、上から目線……でも、嫁にいくまでは例えイケメン男子でも

裸を見られるのだけは嫌だ。


負けるもんか!!


「キャロットさん、お願いします。私、自分で歩きますから」


さすが王子様。両手に花だ。右にキャロットさん、左にマドリ―さん。

そりゃ手放したくはないだろう……


でも、ここは一つ、たった数分の時間だけでもキャロットさんを

お譲りさせてもらいたい……


「キャロットさんじゃないと私はここから一歩も動きませんよ」

と、私はクロス貼りにされた床にお尻をつきしゃがみ込む。


「仕方ない…、キャロット、頼めるか? 汚い子ブタをキレイに磨いてやれ」


やったわ…王子様に勝った!! よし!!


俯く顔から笑みが零れる。吹き出しそうになる声を必死で堪えた。


「ったく…わかったよ、しょうがないなあ。プリンスの言葉は絶対だからね」


「キャロット、時間厳守だからな。急げよ。10分だけ待つ」


「了解!」

キャロットは笑顔で了承する。



プリンスはゆっくりと背を向け奥へと戻って行く。


静かに顔を上げると、その目にプリンスの背中が映っていた。

立ち居ったプリンスの振る舞いは背筋が凛として伸びていた。

その隣を歩くマドリ―に続き、センちゃん、玉ちゃん、ギネス等が戻っていく。


「じゃ、また後でね、マイマイちゃん」

と、おぐちゃんが皆の後を追うように玄関を上がると、次々にピーヤン、凪助、

キューちゃんがその後に続く。


「う…うん」


私はゆっくりと腰を上げた。


彼らが何者なのか まだわからないが、ここで生活する為には彼らに

従うしかない…と思った、、、、、。

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