第87話

「……山崎さん」




ふっと成宮君が私の名を呼んだ。




その甘い声で。




『──……言いながらネクタイをシュって抜きとってな……──』




成宮君はネクタイを段々緩めていく。




「はい…?」




緊張で声が震えてしまった。




でも、成宮君は表情を崩すことなく私を見つめていて。




「あのさ……」




真っ直ぐと交わる視線の中




成宮君は少しだけ切なげに顔を歪ませ───




『──ほんまは俺に抱かれたいんやろ?って──』













「本当に抱いてもいい?」




ネクタイをシュっと抜き取った。

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