第88話

アタシを見下ろす川嶋先生の瞳は何だか熱を帯びているようで不安になる。


彼の前で自分自身を保てるのか……。


アタシはゆっくり彼の視線から逃げようとした。

こんな綺麗な川嶋先生を前にして冷静でいられる方がオカシイとは思うけれど、今はその冷静さがアタシには必要だった。


「……どうして逃げようとする?」


川嶋先生はアタシを見下ろしたままそう言った。


「逃げては……いません、」


自分の弱弱しい声が情けなく聞こえた。


「後悔してる、そんな顔をしている。」


川嶋先生の言葉でアタシの胸の奥を一撃されたような痛みを伴った。

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