第84話

「行こう。」


川嶋先生はまたアタシの腕を掴むと駅とは反対方向に向かって歩き出す。


「行こうって、何処にですか!?」


「そんなの言わなくても分かるでしょ。」


そう言われて身体の奥が熱くなるのをアタシは感じてしまう。


「今日、浅野の誘いを断らなくて良かったよ。」


アタシに触れる彼の手も幾分熱を帯びているようだった。


「知り合ったのはマツの方が先かもしれない……、」



アタシは思わず彼を見上げる。

だけど、前を向いている表情は窺えない。


「でも……俺の方がりせの事を好きに決まっている。」



川嶋先生の言葉にアタシの身体の力は抜けそうで……。

何だか泣きたい気持ちが押し寄せていた。

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