堕天使 16

第76話

「ゆ、許してはくれないんですか。」


「俺を知っていた事を黙っていた事?仕事も名前も嘘をついていた事?」


「……全部です。」


アタシがそう言うと川嶋先生は吹き出すように笑った。


「もうどうでも良いよ。」


アタシはその言葉に少し安心する。

だけど、それは油断だった。


「だけど、これで終わりじゃないから。」


「……え、」


川嶋先生はパウダールームの出口に向かう。


「嘘をついていた事は許してあげるよ、俺は君より大人だしね。だけど、マツと付き合うとかは許さない、絶対にね。」


彼は前を向いたままで続ける。


「俺が何も知らないと思う?嘘をつき通せないコトだってあるんだけどね……。」


そう言って彼は席に戻って行った。



……彼は、


知っていた。


アタシはまたあの夜に感じた痛みが身体に走ったような気がした。

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